
例年繁忙期となる2026年1~3月は、葬儀業界にとって予想外のシーズンとなりました。
総務省統計局が発表している人口動態速報によると、26年1月は全国的に死亡者数が減少
し、全国平均で15%、多い地域では20%も減少したと報告されています。
例年であれば繁忙期となる時期ですが、このデータが示す通り、多くの葬儀社様から「今年は少し暇です」「件数が落ち着いています」といったお声を伺う機会が増えました。
しかし、このような全体的に件数が落ち込む状況下にあっても、件数を昨年よりも伸ばされている葬儀社様が確実に存在しています。
市場全体のパイが縮小している中で件数が増えているということは、すなわち地域でのシェアを大きく伸ばしているということに他なりません。
本コラムでは、この冬の状況下でもお客様に選ばれ続け、結果としてシェアを大きく伸ばした葬儀社が一体どのようなことに取り組んでいたのか、その具体的な施策の一部をご紹介します。
10年以上前の過去客へのアプローチ
多くの葬儀社様が「新規顧客の獲得」や「既存会員様からの施行獲得」には大変力を入れている一方で、「過去にご葬儀をご依頼いただいたお客様」に対するアプローチは、そこまで積極的ではないケースが見受けられます。
家族葬が主流になる以前は、「うちは代々この葬儀社に依頼している」「前回もお願いしたから、今回も同じところで」という流れが当たり前の時代でした。しかし、競合となる葬儀社が増加した現在では、過去のお客様が他社へ流れてしまう可能性は十分にあります。実際に皆様のホールでも、「前回はA社で葬儀をしたけれど、今回は御社にお願いしたい」といったご依頼を受けたご経験があるのではないでしょうか。
せっかく一度は大切なご葬儀をお任せいただいた方だからこそ、いざという時にもう一度ご依頼いただくためには、過去客に対する継続的なアプローチが欠かせません。
そのための具体的な施策として挙げられるのが、過去の施行客に対するDM(ダイレクト
メール)を活用した販促です。
実際に、ある葬儀社様が過去の施行客3,000名に対して事前相談へ誘導するDMを送付したところ、25件もの反響を獲得することができました。DMの内容は、相談で葬儀金額の割引を適用する内容でした。この成果を踏まえ、他の葬儀社様でも同様の取り組みを実践していただいたところ、やはり同水準の安定した反響率を得ることができています。
事前相談後の依頼率アップを目的とした相談品質改善と顧客フォローの実施
近年「事前相談からの入会率や施行率が以前よりも落ちている」というお悩みを抱える葬儀社様は少なくありません。
その要因の一つは、複数社を比較検討するお客様が増加したことです。ひと通り話を聞いた後、「一度家族で検討します」とお帰りになるケースが増えており、これからの事前相談は単にプランをご案内するだけでなく、「他社と比較された上で、最終的に自社が選ばれる」ことまでを強く意識して設計する必要があります。
他社比較を前提とした上で選ばれるために取り組むべき具体策として、大きく2つのアプ
ローチが挙げられます。
① AIを活用した「相談内容そのもの」の見直し
ある葬儀社様では、事前相談の会話を録音し、最新のAIを活用して分析する取り組みを始めました。担当スタッフ一人ひとりのトークの傾向や改善点を客観的に洗い出し、相談品質全体の底上げを図ったのです。自社内だけでは気づきにくい細かな対応の差を埋めることで、結果としてこの取り組み後に入会率が15%上昇するという成果を上げています。
② 信頼を勝ち取る「相談後の顧客フォロー」
相談を終えた後、お電話による追客を実施することも非常に効果的です。ここでの重要なポイントは、決して「入会を促す営業」を行わないことです。
あくまで「後から気になったことや、ご不明な点はございませんでしたか?」とお伺いする純粋な「顧客フォロー」のみに焦点を当てて対応します。
売込みをせずにお客様の不安に寄り添う姿勢が、「他社よりも丁寧で信頼できる」という高い評価に繋がり、いざという時のご依頼に直結します。実際にこの電話フォローを取り入れた葬儀社様では、相談後15日以内の葬儀依頼率が15%も上昇しました。
つまり、緊急度の高いお客様からの依頼を確実に取りこぼさず、自社での施行へと繋げることができているのです。
このように、事前相談数だけではなく相談後までを重視していくことが、今後シェア率を伸ばしていくうえでも重要になります。
他社が取り組んでいない経路からの集客
現在、チラシやWEBマーケティングといった集客施策は、すでにほとんどの葬儀社様が取
り組まれており、市場は完全に「顧客の取り合い」状態に陥っています。
だからこそ、競合他社がまだ本格的に手をつけていない新しい集客経路を開拓し、そこから入会や施行獲得を目指す視点が重要になります。
今回ご紹介する新たなアプローチは、「紹介入会」と「YouTubeの活用」の2つです。
まず「紹介入会」は、既存の会員様からご友人やお知り合いをご紹介していただく仕組みです。この手法は販促費用が大幅に抑えられるだけでなく、チラシなどでは反応しづらい、緊急度の低い「これから客(潜在層)」に自然な形でアプローチできる点が最大のメリットです。
ある葬儀社様では、この仕組みを強化したことで2ヶ月間に15件の入会を獲得しました。1名あたりの獲得コストは約6,000円におさまり、チラシ等の販促手法と比較して約1/8にまでコストダウンすることに成功しています。
次に「YouTubeの活用」です。動画プラットフォームは、新聞を購読しておらずチラシを受け取っていない客層、その中でも特に「喪主層」となる年代へピンポイントでアプローチできるツールです。
まずは地域における自社の認知獲得を目的にしつつ、動画から事前相談への導線をしっかりと設けることで、確実な施行獲得を目指します。
また、現状のYouTube広告は葬儀業界における競合出稿がまだ少ないため、比較的安価なクリック単価で広告を配信できるという大きな利点があります。実際に、ある葬儀社様では12万円のYouTube広告費で事前相談を5件獲得しました。これは、およそチラシ1回分の費用で5件の相談を獲得した計算になり、非常に高い費用対効果を示しています。
このように、すでに競合がひしめき合っている既存の経路にのみ投資を続けるのではなく、新たな集客経路を積極的に活用していくことで、これまでアプローチできなかった客層を確実に取り込んでいくことが、これからのシェア拡大の鍵となります。
まとめ
今回は、全国的に死亡者数が減少傾向にあった環境下においても、しっかりと施行件数を伸ばしている葬儀社様の具体的な取り組みをご紹介いたしました。
死亡者数に左右される業界であるからこそ、自社の業績を安定して向上させていくための方策を練る必要があり、それは単なる「件数」の増減に目を向けるだけでなく、地域内における自社の「シェア」をどれだけ拡大できているかを注視していくことが極めて重要です。
自社のシェアを確実に伸ばしていくための第一歩として、今回ご紹介した「過去客へのアプローチ」「相談品質化全と顧客フォローの実施」「他社が取り組んでいない集客経路の開拓」といった施策に、ぜひ取り組んでみてください。
なお、今回ご紹介した成功事例や手法は、数ある施策のほんの一部に過ぎません。
本コラムだけでは書ききれない、より実践的なノウハウや各社様の状況に合わせた具体的な取り組みも多数ございます。
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